Baggage of

[The Coffin Of Vulcanus]World

 

作中でよく使われるキーワードをキャラクター設定なども織り交ぜ、まとめてみました。

キャラクターのプロフィールを主に新規設定が公開される都度追加予定。

教皇庁関連の諸設定は何気にほぼノンフィクションなので、ちょっとしたトレビアが見つけられるかもしれません(笑)。

 

ルカシュ=ディフラ=バートリ

本作の主人公。プロフィールの詳細はこちらへ→ 

 

ジル=ド=レイ 

第2の主人公とも言うべき存在。プロフィールの詳細はこちらへ→ 

 

レジーナ=マウンセル

ルカシュのパートナーを務めている美貌のシスター。実家はイタリア貴族の末裔という名門のお嬢様。物腰柔らかで育ちの良さをうかがわせる上品な印象の女性だが、ルカシュの関係者である以上、只者であるはずもなく、教理聖省に属する特務局のエージェントである。長官の意を体して各政府機関やマスコミに圧力をかけ、事件をもみ消すのが彼女の主な仕事。(しかし近年の不可解な事件の急増は教皇庁ばかりでなく、各国特務機関の手に余るものになりつつある)

正式に退魔士としては認定されていないものの、彼女自身霊能力者としては高いポテンシャルの持ち主で、ルカシュもそれを認めている。

また、ルカシュの正体を知る数少ない人物の一人でもあり、過去に何やら因縁があるらしい。なかなかしたたかな女性で、さすがのルカシュも口では彼女にかなわない。

 

舞阪蓮美

ルカシュとはすっかり腐れ縁になっている節がある、警視庁刑事部所属の女性警部補。おっちょこちょいのトラブルメーカーの印象が強い彼女であるが、国家公務員一種試験合格のいわゆるキャリア官僚で、警察機構内では一握りのエリートである。

明るく人当たりの良い性格で、男女の区別なく好かれており、その人望は厚い。同じ巨大組織のエリートでも日陰者のルカシュとは対照的である。

生真面目な努力家である彼女は、当初ルカシュとその職能に懐疑的な視線を送っていたが、実際その仕事現場を目の当たりにしてからは、彼に一目置くようになった。

本人は否定するだろうが、プライベートな面でも少なからず気になる存在のようで、今後レジーナその他とヒロインの座をかけて熱い戦いを繰り広げるようになる……かもしれない。

 

ヴィンセント=マウンセル

レジーナの伯父でトリノ大司教。元〈スパーダ〉で現・教理聖省長官枢機卿。教皇庁内でも五指に入る実力者。彼の推挙ということもあり、素性に謎の多いルカシュについても誰一人言及することが出来ないらしい。

現役時代に培った独自のネットワーク、連絡員として姪をルカシュの下につける事で、その活動を支えている。

 

ヴァティカン市国

カトリック信者10億人の総本山。国土面積は0.44平方キロメートル(日本の日比谷公園の約3倍ほど)。人口はわずか800人程度で(規定によって1000人を超えない事になっている)、国外からの通勤者を含めても日中の人口は3000人に満たないという世界最小の国。しかし、教皇を元首とし、枢機卿達が国政を担う歴とした主権国家であり、視界各地40万人を越える司祭を中核とした情報網(ヴァティカン・ネットワーク)はかのCIAをも上回るという。それゆえに国際政治に及ぼす影響力も大きい。

国民に納税の義務はなく、国の経済は観光収入や世界の一等地に所有する不動産からの膨大な家賃収入、信徒の寄付金などによってまかなわれている。独立国としての行政事務と教徒の宗教行政は、教皇庁の各機関によって分担管理されている。

 

教皇庁

法王庁、聖庁とも言う。カトリック教会の首長たるローマ教皇を補佐して、全カトリック教会を統治する中央機関。同時にヴァティカン市国の行政府でもある。

その起源はローマ在住の聖職者の中から教皇の補佐役が選ばれたところにあり、やがて11世紀にはその役割は枢機卿が担うところとなった。この枢機卿会の権限や規則が明確化され、教会統治のための諸機関が設けられたところに、現在の教皇庁の原型が形成された。

第二ヴァティカン公会議以後の1967年に「現代化」のための改組が実施され、その結果現在は枢機卿を長官とする国務省ほか九つの聖省が中央行政機関として置かれている。

 

枢機卿

カーディナルの訳語。カトリック教会でローマ教皇に次ぐ高位の聖職者。全世界の司教の中から選ばれ、教皇によって任命されるその最高顧問。

教皇庁の各省長官には枢機卿が任命されヴァティカンに定住するが、多くは各国の所属教区に留まり、枢機卿会議のおりにローマに参集する。

枢機卿団の定員は現在120名であるが、定年制が定められ、満80歳を超した枢機卿は一切の公務から退くことになっている。

ちなみに日本の教会はヴァティカンから重視されており、現在も一名が枢機卿に任命されている。

 

司祭

ローマ・カトリック教会、東方正教会、聖公会での名称で、一般に神父という尊称をもって呼ばれる教会職。男性に限られる。

ミサを執行し、信徒に洗礼、告解、終油の秘蹟を授け、福音の宣教を行うなどの権能と責務とを有しており、これらの活動を通じて、司教職への協力者として、直接に小教区の信徒の司牧を行う。なお、意外と知られていないが、ローマ・カトリック教会では、司祭的生活の理想として、妻帯は認められていない。

 

国務(聖)省

ヴァティカン市国の統治機関。省の長は国務長官枢機卿であり、その任務は教皇の意を体して教皇庁全機構を統率することで、外交関係も司る。

つまり、この座にある人物が事実上の教皇庁最高権力者である。

 

教理聖省

教会の信仰と道徳の保護・奨励をその役目とする機関。元・検邪聖省──かの悪名高き異端審問所が名を変え現代にまで残ったものである。

表向きは異端・異説の審査はすでに行われていないことになっているが、現在もなお、教皇庁の権益に関わる事件の調査、および処理(合法・非合法を問わず)を行う特務機関として機能している。

また、異端審問時に回収してきた多数の超常文明(オーバーテクノロジー)による「遺産」──魔法技術を所有・管理しており、皮肉にも、現代最高レベルの魔道研究機関でもある。

この世界における「現代」もまた基本的には科学主体型社会であり、魔道関連の事項は迷信として闇に葬り去られている。しかしその一方で、非公式な形ではあるが、世界各地に非科学的災害に対する危機管理組織および特務機関が設置されているのもまた事実である。この教理聖省が持つ「業界」での権威は計り知れないものがあり、国務聖省長官が表の最高権力者ならば、裏でヴァティカンを取り仕切っているのが教理聖省長官である。そしてこの長官こそ他ならぬレジーナの伯父であるヴィンセント=マウンセル枢機卿である。

 

聖職者聖省

その名の通り、聖職者と信徒の規律監視、カトリック要理教授、ミサ執行、聖堂財産管理を行う機関。

風紀を重んじる潔癖な合理主義者である聖職者聖省長官枢機卿は、教会組織の近代化を推進しており、時代錯誤で秘密主義な教理聖省の存在を常々疎ましく思っている。その為、枢機卿会議における長官同士の衝突は絶えない。

 

公式エクソシスト

悪魔祓い(エクソシスズム)は本来厳格な形式を持って行われる宗教儀式である。加えて非公開の秘蹟であり、教会の外で白昼堂々と行われるようなものではない。

……つまり、本来のエクソシストというのは、いわゆる「ゴーストバスター」のイメージとは程遠い存在なのである。

教会法1172条によると、公式エクソシストとは基本的に「教皇に任命権のある司教か、その司教に認可を得た司祭」によって任命されるもので、歴史的にはどれくらい遡るのかといえば、紀元416年の法王インノケンティウス1世の時代より1500年もの間これが踏襲されているという。

エクソシストに選抜される条件を要約すると「信仰心に篤く、人格は思慮深く、品行方正。中年以上の年齢であること」が要求されているのが分かる。逆に超能力的なものは特に必要とされないのである。さらに「あらゆる利益への貪欲さと無縁」でなければいけない。一言でいってしまえば、ズバリ「無料奉仕」。どこかの極道神父のように料金請求なんぞもっての外なのである(笑)。

近年改訂された典礼書では「心理学や精神病についての学問を修めなければならない」という項目が追加されている。結局のところ、エクソシストの使命は依頼者の心を癒すカウンセラー的意味合いが強い。例え、依頼者の症状が真に「悪魔」によるものであったとしても、その処置後、逃げ去った「悪魔」をエクソシストが追い討つ事はない。目的はあくまで憑依者を救う事であり、そもそも悪魔もまた、神の被造物と考えるからである。それ故に、エクソシストは悪魔を滅ぼす意思も力も持たないのである。

だが……物事には常に例外というものがついてまわる。その「例外」が〈スパーダ〉と呼ばれる特権エクソシスト達である。

 

〈スパーダ〉

公式エクソシスト達の頂点に立つ教皇庁直属の特権エクソシスト集団の呼称。イタリア語で〈神の御剣〉の意。

現在の正式メンバーは12名で、当然我等が主人公もその一人。一般にエクソシスト達は癒しを最重要課題とし、その儀式内容も「除霊」の段階で終了するのに対して、彼らの使命は現象因子の徹底消滅、すなわち「浄霊」ないし「封殺」の段階にまで及ぶ。

従事任務が通常のエクソシストのそれより特殊かつ危険度が高い事、何より資格条件を満たす人材が非常に少ないため、一般聖職者にはない数々の権能を持つ。選抜基準も典礼秘跡省の定めたものとは必ずしも当てはまらず、何より実力が重視される。

それ故に比較的若い人材が多く、同時に聖職者としてはいささか問題のある人物も多い。また、その非常識な能力値から、在野の退魔士達には、ある意味魔族以上に恐れられていたりもする。教義に矛盾をきたす彼らの存在を快く思っていない聖職者も少なくない。教皇庁の抱えるジレンマの一つである。

一応、教理聖省の管理下にあるが、部隊編成はされておらず、あくまでその活動は個人個人の意思で行われている。しかし、時に教皇庁を通じて、一般のエクソシストの手には負えないと判断された事件の調査要請を受け、現地へ派遣される場合もある。

 

悪魔祓いに対する教皇庁の内情

非科学的災害に対する危機管理組織群の中でも、ずば抜けた規模と歴史を誇る教皇庁だが、近年の不可解な事件の急増と反比例して、その業界に対する影響力は失墜しつつある。

原因として他の危機管理組織・特務機関の台頭、それに伴う慢性的な人材不足が挙げられる。先に述べた通り、教皇庁公式エクソシストの形式は1500年前から細部の改訂はあったにしろほとんど変化していない。儀式色が強く採用条件も厳しいため、司祭の中でもごく限られた人物しか任命されない。特例の〈スパーダ〉はそれに輪をかけて優秀な後継者の確保が難しくなっており、現在その職務に見合った実力を持つのは、欧州圏内でわずか12名しか存在していない(事実上、世界中でこの人数、という事になる)

この現状に対し、教理聖省長官枢機卿は、時代に対応した制度の早急な改革を求めているが、協会の近代化を推し進めている多くの聖職者達は悪魔祓いに懐疑的であり、教理聖省の機関自体存続が危うい状況になっている。これとは逆に教敵の徹底殲滅を旨とする守旧派も存在し、三者三様、教皇庁内部では巨大組織のお約束にもれず、足並みのそろわない状況が続いている。