2015年10月2日 / 最終更新日時 : 2015年10月2日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(24) 「ジャンヌ……どこか辛かった……ですか?」 とうとう両手で顔を覆って嗚咽し始めた少女に、青年が気遣わしげな表情で声をかける。 声の様子から相手の不安を感じとり、ジャンヌは頭を振ってそれを否定しつつ、とめどなく零れ落ちてく […]
2015年9月2日 / 最終更新日時 : 2015年9月2日 aoi-tamaki 長編小説 帰り着く場所(23) かつて、〈救国の聖女〉と、あるいは〈破滅を運ぶ魔女〉と呼ばれた少女がいた。 主が望まれるままに生み出され、示されるままに学び、導かれるままに戦場へ立ち──役目を果たして炎に消える。 それが歴史の中で彼女に与えられた尊い使 […]
2015年8月2日 / 最終更新日時 : 2015年8月2日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(22) 人知れず静かに故郷を後にする騎士の胸中を我が事のように感じながら、彼が愛した少女は青年の行く末を想う。 次に彼がフランスの地へ──生まれ育ったブルターニュへと戻るのは何時になるのだろう。 もしかしたら、これが今生で最後の […]
2015年7月27日 / 最終更新日時 : 2015年7月27日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(21) ──1458年12月26日。 これまで歩んできた戦いの日々に思いを馳せながら、一人の英傑が静かに神の御許へ導かれようとしていた。 その名はアルテュール・ド・リッシュモン。 〈乙女〉ジャンヌの導きによりフランス王となったシ […]
2015年7月20日 / 最終更新日時 : 2015年7月20日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(20) 律動的な響きを石壁に刻みながら進んでいた複数の足音が、ブーヴルイユ城の中でも最下層に位置する鉄格子の前で止まる。 数多の命と怨嗟を吸い込んできた陰気なルーアンの城塞の中でもとりわけ濃い瘴気に包まれた常闇の間。 「お疲れの […]