2015年6月28日 / 最終更新日時 : 2015年6月28日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(18) ……一体あれからどれくらいの日数が経過したのか。 牢へと近づいてくる複数の気配に、つとジルは顔を上げた。 外界から隔離された地下牢に流れる時間感覚は非常に曖昧で、更に消耗しきった身体がそれに追い打ちをかけた。 […]
2015年6月15日 / 最終更新日時 : 2015年6月15日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(17) 「……ジル……ジル……」 彼の姿は最後に分かれた時とは別人のように変わり果てていた。 宮廷に集う貴婦人方を虜にし、前線に立つ兵士達の尊敬を一身に集めていた美貌こそ損なわれていなかったが、そのやつれた額にかかる髪はどうした […]
2015年6月11日 / 最終更新日時 : 2015年6月11日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(16) ……それは、なにもかも仕組まれたことだった。 薄暗い牢獄の中で、己に待ち受ける運命がもはや覆しようのないものであることを悟った時、少女は涙した。 事態の残酷さに魂まで引き裂かれそうだった。 だって、この結末はつまり──彼 […]
2015年6月6日 / 最終更新日時 : 2015年6月6日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(15) 「幸せ…………ですか?」 青年が口にした言葉を、少女は戸惑いと共に反芻する。 穏やかな碧い瞳は、彼女を包み込むような優しさで溢れていて、昔語りを終えた今の彼からそのような眼差しを向けられる事は、少女の理解を超えていた。 […]
2015年6月1日 / 最終更新日時 : 2015年6月1日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(14) その日、頭上に広がっていたのは、雲一つない晴天だった。 遠く、果てなく、ひたすらに。神の国まで続くような高い空の下、主の恵みをもって絶え間なく降り注ぐ陽光の中、青年が捧げていたのは祈りではなく、同じキリスト教徒の血であり […]