2015年7月18日 / 最終更新日時 : 2015年7月18日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(19) ……もう、やめて…… 深い、深い闇の中で。少女はひたすら嗚咽し、懇願する。 いずことも知らぬ場所にいる、誰かに向かって。 ……もうこれ以上、彼を苦しめないで……彼を壊さないで……お願い…… 彼女が愛する青年と引き離された […]
2015年6月28日 / 最終更新日時 : 2015年6月28日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(18) ……一体あれからどれくらいの日数が経過したのか。 牢へと近づいてくる複数の気配に、つとジルは顔を上げた。 外界から隔離された地下牢に流れる時間感覚は非常に曖昧で、更に消耗しきった身体がそれに追い打ちをかけた。 […]
2015年6月15日 / 最終更新日時 : 2015年6月15日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(17) 「……ジル……ジル……」 彼の姿は最後に分かれた時とは別人のように変わり果てていた。 宮廷に集う貴婦人方を虜にし、前線に立つ兵士達の尊敬を一身に集めていた美貌こそ損なわれていなかったが、そのやつれた額にかかる髪はどうした […]
2015年6月11日 / 最終更新日時 : 2015年6月11日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(16) ……それは、なにもかも仕組まれたことだった。 薄暗い牢獄の中で、己に待ち受ける運命がもはや覆しようのないものであることを悟った時、少女は涙した。 事態の残酷さに魂まで引き裂かれそうだった。 だって、この結末はつまり──彼 […]
2015年6月6日 / 最終更新日時 : 2015年6月6日 aoi-tamaki 長編小説 還り着く場所(15) 「幸せ…………ですか?」 青年が口にした言葉を、少女は戸惑いと共に反芻する。 穏やかな碧い瞳は、彼女を包み込むような優しさで溢れていて、昔語りを終えた今の彼からそのような眼差しを向けられる事は、少女の理解を超えていた。 […]